「技能実習制度」が「育成就労制度」に変わります

新着情報

2024年07月04日

2024年6月14日、技能実習に代わる新たな制度「育成就労」を新設するための関連法の改正が、国会で可決・成立しました。

新たな制度運用の詳細については、未だ明らかではありませんが、これまでに公表されている制度の概要は、以下のとおりです。

育成就労制度の目的
2023年11月の「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」による最終報告書では、「技能実習制度を実態に即して発展的に解消し、人手不足分野における人材の確保と人材の育成を目的とする新たな制度を創設」することが提言されました。

これを受けた今回の法改正により、「技能実習法」は「育成就労法」へと抜本的に改められ、また、法律の目的も、「開発途上地域等の経済発展を担う『人づくり』への協力」から、「特定技能1号水準の技能を有する人材の育成」、「育成就労産業分野における人材の確保」に改められました。

技能実習制度との比較
今回の法改正で、本来は帰国を前提として、通算最長5年の在留が認められた「技能実習」の在留資格は廃止され、代わって、「特定技能」への移行を前提とする「育成就労」の在留資格が設けられ、同資格で在留が認められる期間は原則3年以内とされるなど、制度は大きく改められました。

しかし、新たな制度においても、

〇「育成就労機構」による「育成就労計画」の認定
〇「育成就労機構」による「監理支援機関(旧監理団体)」の許可
〇「監理支援機関」による「育成就労実施者」に対する監理
〇 試験による育成評価

など、用語の置き換え等はあるものの、基本的な枠組みは受け継がれています。
両制度の主要な点の比較は、次のとおりです。

受入れ対象分野・人数
育成就労制度の受入れ対象分野(育成就労産業分野)は、技能実習制度の職種等を機械的に引き継ぐのではなく、新たに設定することとされています。

また、特定技能への移行を目指すものであるため、特定技能制度の「特定産業分野」のうち、育成就労を通じて技能を習得させるべき分野に限る(国内での育成になじまない分野は対象外)とされています。

なお、季節性のある分野については、派遣形態の育成就労も認められるようです。
特定産業分野については、2024年3月29日の閣議決定により、新たに4分野が追加されることとなりましたが、今後も、技能実習職種分野の実態等を踏まえて、特定産業分野への新たな分野の追加が検討されると思われます。

育成就労外国人の受入れ見込み数(上限数)については、特定技能1号と同様に、受入れ対象分野ごとに設定するとされていますが、

〇2023年末に日本に在留する技能実習生は約40万5千人、特定技能外国人は約21万人
〇政府が設定した2024年度から5年間の特定技能1号の受入れ見込み数(上限数)は82万人

という状況から、相当な規模となることが見込まれます。

育成の評価等
育成就労制度では、基本的に3年間で人材を計画的に育成し、特定技能へ連続させることとされています。  
具体的には、外国人ごとに定める育成就労計画において、特定技能制度と同じ業務区分の中で、修得すべき「主たる技能」を設定し、その技能に対応する特定技能1号移行のための試験等に合格するまで育成することとなります。

 就労開始時の日本語能力要件
技能実習制度と異なり、外国人が就労を始める前までに日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格すること、またはそれに相当する日本語講習を認定日本語教育機関等において受講することが要件とされています。

育成1年目における評価
受入れ機関は、外国人を受け入れてから1年が過ぎるまでに、技能検定試験基礎級等のほか、まだ合格していない外国人には日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)を受験させなければなりません。

特定技能への移行
育成期間を経て特定技能1号へ移行するには、技能検定試験3級等または特定技能1号評価試験と、日本語能力A2相当以上の試験(日本語能力試験N4等)の合格が要件となっており、受入れ機関が受験させることとされています。

技能実習制度では、技能実習2号を良好に修了した場合には試験等が免除されましたが、育成就労制度では、試験等に合格しなければ特定技能1号へは移行できません。

なお、試験等に不合格となった外国人は、同じ受入れ機関での就労を続ける場合に限って、再受験のために最長1年の在留の継続が認められます。

転籍
やむを得ない事情がある場合の転籍
技能実習制度でも、人権侵害などの「やむを得ない事情」がある場合には、受入れ機関の転籍が認められていましたが、育成就労制度では、労働条件が契約と実態で異なるなどの場合もその対象とするなど、「やむを得ない事情」の範囲の拡大・明確化と、転籍手続の柔軟化が図られることとされています。

 本人の意向による転籍
政府は、関係閣僚会議の決定で、3年間一つの受入れ機関での計画的な育成就労が効果的であり望ましいとの考えを示しています。しかし、その一方で、育成就労法には、育成就労外国人による受入れ機関の変更希望の申出に関する規定が新設されており、一定の要件の下で、外国人本人の希望による転籍が認められることとなりました。

関係閣僚会議の決定では、以下の要件が示されています。

①転籍先の機関が同じ業務区分であること
②元の受入れ機関での就労が一定の期間以上であること
③技能検定試験基礎級と一定の水準以上の日本語能力試験に合格していること
④転籍先の機関が育成就労を適正に実施する基準を満たしていること
⑤転籍先の機関において新たに育成就労計画の認定を受けること

②の「一定の期間」については、受入れ対象分野ごとに1~2年の範囲内で設定、また、③の「一定の水準」については、受入れ対象分野において日本語能力A1~A2の範囲内で設定することとされており、今後省令で具体的に規定されることとなります。

なお、外国人の受入れに要した初期費用については、転籍先の機関による分担、元の受入れ機関への補填などの仕組みも検討されることとなっています。

受入れ機関
技能実習制度と同様に、受入れ機関ごとの受入れ人数枠が設定されることとされていますが、詳細は明らかではありません。

優良な受入れ機関には、手続の簡素化等の措置が講じられることとされていますが、受け入れ人数枠の拡大等についても、今のところ不明です。

なお、受入れ機関に対しては、育成・支援体制等の要件を適正化するとされているほか、特定技能制度における分野別協議会への加入も新たに要件に加えられるようです。

移行期間
改正法は、成立後3年以内に施行されることとされており、2027年の施行となると思われます。 
また、施行後は、激変緩和措置として3年間の移行期間が設けられることとされており、概ね2030年までは、技能実習制度と育成就労制度が併存(技能実習生と育成就労外国人が混在)することとなります。

育成就労制度については、今後、省令や運用要領等が示されることとなります。
新たな情報が入れば、随時記事を更新して参ります。



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