【連載企画】育成就労への道 ~その2~

新着情報

2025年09月04日

育成就労への道 その2

 6月6日開催の「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」において、石破総理大臣が、
「多岐にわたる施策を総合的に推進する司令塔機能を強化するため、この閣僚会議の体制を拡充するとともに、政府横断的な取組方針の策定も見据え、内閣官房に事務局組織を設立することといたします。」
と発言されたことを受け、前稿は、「閣僚会議における外国人受入れ政策を巡る検討は、今月にも新たな、そして大きな展開があるようです」と結びました。

 7月15日、内閣官房に「外国人との秩序ある共生社会推進室」が設置され、その発足式において、石破総理大臣は、職員に対し、
「皆様におかれましては、(中略)、省庁の枠を超えて緊密に連携し、外国人の懸念すべき活動に対する実態把握、関係機関のより緊密な連携を可能とするための国・自治体における情報基盤の整備、各種制度・運用の点検・見直しなどに取り組んでいただきたいと思います。」 と訓示されています。(注1)

 一方、8月29日、鈴木法務大臣は、外国人の受け入れに関する論点を整理した私的勉強会の中間報告書を公表されました。(注2)

 同報告では、
「出入国在留管理庁の体制整備を図り、 出入国及び在留管理の観点から必要な検討を可能な限り進めていく。」
「関係省庁と緊密に連携し協力を得て、多角的な観点から外国人の受入れの基本的な在り方について検討を進め、国民の安全・安心、経済・社会の活力、持続的な成長に資する出入国在留管理行政を実現することが重要。」
と総括されています。

 ただ、政府による外国人受入れ政策の検討が一層本格化してきていることは窺えるのですが、共生社会推進室の具体的な活動に関する公表や報道は見受けられません。
 また、法務大臣勉強会の中間報告も、将来の我が国の総人口に占める外国人比率の試算など、非常に興味深い内容なのですが、かなり広く大きな視点から考察されており、特定技能・育成就労制度の運用についてはあまり触れられていません。
 そこで今回は、前稿末尾で「別の機会に…」としていた、特定技能・育成就労制度に関する有識者・専門家による検討の状況について見てみたいと思います。

 有識者・専門家による三つの会議     

 閣僚会議の下には、下の図1(注3)のとおり、目的の異なる検討・議論を行うための有識者・専門家による三つの会議が置かれています。

【図1】

 それぞれの会議の目的と構成員は、以下のとおりです。

 有識者会議は、日本総研チェアマン・エメリタスを座長に、北海道知事、鈴鹿市長、明治大学教授、経団連本部長、連合局長などが構成員を務められています。また、専門家会議有識者懇談会の構成員も、錚々たる方々です。

 別会議の構成員を兼務されている有識者・専門家も多く、有識者会議専門家会議は2名、有識者会議有識者懇談会は7名の方が兼務されており、全国中央会事務局次長は、三つの会議の構成員を兼務されています。

 有識者会議での検討・議論~基本方針の決定

 上の図1のとおり、3月11日開催の閣僚会議と閣議において、特定技能・育成就労制度の基本方針が決定されました。(注4)

 それに先立って、2月6日に第1回、2月17日に第2回の有識者会議が開催されています。
出入国在留管理庁HPに掲載されている資料や議事録(注6~7)からは、有識者からの指摘や提起が真摯に取り入れられて、政府案が修正されていく過程が細かく記録されており、形式的に開催された会議ではないことがよく分かります。
 お時間があれば、議事録をご一読されることをお勧めしたいと思います。

 有識者会議の検討・議論を踏まえて決定された基本方針では、以下のように、両制度の意義・受入れ分野や、受け入れる外国人に関する基本的事項などが定められています。

〇 受け入れる外国人材に関する基本的事項(注5)

  この基本方針の決定をもって、有識者会議での検討・議論は、一つの区切りを迎えました。

 各会議の開催状況            

これまでの各会議の開催状況は、下の表1のとおりです。

【表1】

 2月12日掲載の専門家会議(注8)において、特定技能・育成就労制度の技能評価試験に関する方針について議論され、3月11日、基本方針とともに同方針が決定されました。(注9)
 この試験方針では、試験の水準、科目、実施方法、場所、回数、結果の公表等の大枠が定められており、詳細は受入れ分野ごとの試験実施要領で定められることになります。

 一方、有識者懇談会は、2月27日の第3回以降、開催されていません。
改正入管法・育成就労法の関係省令等は、政府案として4月28日に意見公募(パブリック・コメント)に付されており、それをもって同会議の役割は一旦終了、ということなのでしょう。

 なお、第3回の有識者懇談会(注12)では、移住者と連帯する全国ネットワーク、国際協力機構(JICA)、国際人材協力機構(JITCO)などの関係者の方が意見を述べられておりますが、これも非常に興味深い内容です。
 こちらについても、議事録をご一読されることをお勧めしたいと思います。

 スケジュールと次の区切り        

 現在、有識者会議専門家会議は、受入れ分野ごとの運用方針(分野別運用方針)の検討・議論に移っています。

 5月20日開催の第3回有識者会議の資料(注10)では、下の図2のとおり、その後の有識者会議専門家会議のスケジュールの案や、下の図3のとおり、特定技能の受入れ分野の追加や、育成就労の受入れ分野についての案が示されました。

 また、至近の開催となる、8月4日の第6回有識者会議(注11)では、
 〇 平均賃金(一般労働者全体・特定技能外国人・技能実習生)
 〇 生産性向上・国内人材確保(これまでの取組と成果)
 〇 1号特定技能外国人として入国した者のその後の在留状況
 〇 バス・タクシー運転者に係る日本語能力要件
など、興味深い議題が取り上げられており、年末の分野別運用方針の決定に向けて着々と検討・議論が進められているようです。

【図2】
【図3】

 一方、専門家会議は、6月16日に第2回、6月30日に第3回が開催されています。

 厚生労働省のHPによれば、「特定技能・育成就労制度の各試験の適正性について(各論)」が議題に取り上げられたようです。
 HPには議事録や資料等は掲載されていませんが、そこでの検討・議論は、おって有識者会議に反映されていくと思われます。

 なお、有識者会議専門家会議は、年末の分野別運用方針の決定で次の区切りを迎え、来年以降は、新たな受入れ分野の追加や受入れ見込み数の変更などを決定する必要に応じて、適宜開催されることとなるようです。

 「育成就労制度運用要領」はいつ発出…? 

 近々公布されると思われる改正入管法・育成就労法の関係省令等(8月中は未公布)と、分野別運用方針により、育成就労制度のほぼ全容が明らかになりますが、制度の運用の詳細は、技能実習制度と同様に「育成就労制度運用要領」で定められることになると思われます。

 この要領は、関係者(法務省、出入国在留管理庁、厚生労働省、外国人育成就労機構、監理支援機関、育成就労実施者、育成就労外国人等)の共通認識となるものであり、早期の発出が望まれますが、現在のところ、作業の進捗や発出のタイミングについての情報はありません。
 ただし、上の図1では、「施行1年前目途」として「(監理支援機関の許可等の)事前申請開始」とされているため、要領はその数か月前(分野別運用方針の決定と同じタイミング?)には発出されるのではないかと思われます。

 アイム・ジャパンでは、引き続き閣僚会議・有識者会議等の動向に加え、改正入管法・育成就労法の関係省令等の公布分野別運用方針の決定制度運用要領の発出等についてもフォローして、随時皆様にお知らせしてまいります。

▶育成就労への道(1)

(注1)首相官邸HP 外国人との秩序ある共生社会推進室発足式
 https://www.kantei.go.jp/jp/103/actions/202507/15hossokushiki.html

(注2)出入国在留管理庁HP 外国人の受入れの基本的な在り方の検討のための論点整理(令和7年8月法務大臣勉強会)     
 https://www.moj.go.jp/isa/policies/others/05_001390_00001.html

(注3)厚生労働省HP 第1回特定技能制度及び育成就労制度の円滑な施行及び運用に向けた有識者懇談会(資料2-1)     
 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001397715.pdf

(注4)出入国在留管理庁HP 閣議決定等
 https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/nyuukokukanri01_00132.html

(注5)出入国在留管理庁HP 特定技能制度及び育成就労制度に係る制度の運用に関する基本方針の概要
 https://www.moj.go.jp/isa/content/001434970.pdf

(注6)出入国在留管理庁HP 第1回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議
 https://www.moj.go.jp/isa/03_00117.html

(注7)出入国在留管理庁HP 第2回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議
 https://www.moj.go.jp/isa/03_00121.html

(注8)厚生労働省HP 特定技能制度及び育成就労制度の技能評価に関する専門家会議
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_51194.html

(注9)出入国在留管理庁HP 試験関係
 https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/nyuukokukanri01_00135.html

(注10)出入国在留管理庁HP 第3回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議(資料2-1)
 https://www.moj.go.jp/isa/content/001444492.pdf

(注11)出入国在留管理庁HP 第3回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議
 https://www.moj.go.jp/isa/03_00148.html

(注12)厚生労働省HP 特定技能制度及び育成就労制度の円滑な施行及び運用に向けた有識者懇談会
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_50156.html

  1. HOME
  2. 新着情報
  3. 【連載企画】育成就労への道 ~その2~