2021年3月24日
外国(にほん)で暮らす 01
「外国(にほん)で暮らす」では、日本人にとっては当たり前、だけど外国人にとって当たり前でないものを連載します。その第1弾は、食品成分表示です。
コロナ禍で自宅で食事をする機会が増えた人も多いかと思います。私も昨年の春以降、自炊をするようになり、スーパーに行く機会が増えました。そこで気づいたのは、スーパーで買い物をする外国人の方がたくさんいるということです。よく観察すると、みなさん日本人の買い物客よりも食品パッケージの裏側をまんじりと見ています。なんでだろう。
昨年の法務省による在留外国人統計によると、日本に住んでいる外国人は約288万人にのぼるそうです(2020年6月時点)。つまり、日本の総人口の約2%が外国人だということです。しかし、街を見渡せば、道路標識・駅の表示・テレビから何から何まで日本語ばかり。日本人からすると当たり前の光景が、外国人・日本語が母語でない人にとっては、ひょっとすると当たり前ではないかもしれない。スーパーで食品を吟味していたあの外国人の女性も何かに困っていたのかもしれません。
カロリーや添加物が含まれているか確認するために食品パッケージの裏面を確認する人も多いかと思います。そうしたいわゆる食品成分表示は、当然ながら日本語で書かれています。しかし、外国人の方もそうした情報を必要としているはずです。例えば、技能実習生にも多い、イスラム教を信仰する人々は、豚肉・酒類、動物の血液やその他魚介類の一部を摂取することが禁じられています(魚介類については一部の宗派)。また、ベジタリアン(菜食主義者)の中には、いっさいの動物性たんぱく質を口にしない人もいます。そうした人たちにとっては、自分が口にする食品の成分を知ることができるか否かはアイデンティティに関わる重要な問題です。特に技能実習生のように日本に来てまもない外国人の方は、日本語で書かれた食品成分表示を理解するのは難しいはずで、なおさら周囲の人のサポートが必要です。
日本で販売されている加工食品には、アレルギーを引き起こす可能性のある成分については原材料名の箇所に記載があることが大半です(記載がないからといって対象の成分が含まれていないとは保証できません。必ずご自身でよく判断して購入するかしないか決めてくださいね)。
例えば、みんな大好きなみそラーメンの原材料名をみてみますと、ムスリムやベジタリアンの人が気をつけるべきと思われる成分は以下のようなものでしょう。植物油脂(ラード、植物油脂)、スープ(みそ、ポークエキス、かつおエキス)、ビタミンB2(一部に、小麦・乳成分・ごま・大豆・鶏肉・豚肉を含む)
特に、スープに含まれているポークエキス・かつおエキス、そしてビタミンB2には豚肉が含まれているので気を付ける必要があります。イスラム教徒やベジタリアンの実習生のみなさんは、豚肉(ぶたにく、pork)、ポーク(pork)、ラード(豚肉の油が使われていることが多いそうです)といった表記にはとくに注意したほうがよさそうです。
ラーメンだけでなく他にもカレールー、スパゲティーソース、インスタントの味噌汁、お煎餅といった一部の和菓子にも豚肉由来の成分が含まれていることが多いです。スーパーで買い物をするときは、参考にしてみてください。
続いて、みなさん大好きなスイーツにも注意することがあります。意外にもお菓子にはアルコールやアルコールに由来する成分が含まれていることが多いです。特にプリンやチョコレートケーキ、焼き菓子といった洋菓子やアイスクリームには洋酒、酒精、粉末酒といった少量のアルコールが含まれているので注意しましょう。
もっとハラルフードについて知りたい人は、次のWebサイトが参考になります。チェックしてみましょう。
https://jhba.jp/halal/
アレルギーのない人にとっては普段気にすることのない食品成分表示ですが、イスラム教徒やベジタリアンの人にとっては自らの信条やアイデンティティに関わる重要な判断に欠かせない情報になります。技能実習生と普段かかわる企業や地域のみなさん、もし近くのスーパーで悩む外国人の方を見つけたら、声をかけてみてください。
少しの思いやりが彼らにとっては大きな助けになるはずです。