(再掲)外国人材が拓く介護の未来 笑顔は言葉をこえて

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(再掲)外国人材が拓く介護の未来 笑顔は言葉をこえて

(2021年10月20日の記事に加筆しました)

「介護はコミュニケーションの仕事。日本人でも難しいのに、日本語が通じない外国の方にはとても務まらないのでは?」介護の会社で働いていた当時、外国人の雇用について記者から質問を受けると、私は決まってこう答えていました。人材不足の切り札はロボットか外国人かとささやかれはじめた頃、介護の現場に外国の方を入れることはまだめずらしく、それだけで新聞にそれなりの記事が出るような時代でした。今からわずか6~7年前のことです。

15年後、日本人の3人に1人が65歳以上

内閣府の「令和3年版高齢社会白書」によると、2020年(令和2年)10月1日現在、日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は28.8%。人口が減るなかで今後も65歳以上の人は増え続け、15年後の2036年(令和18年)には33.3%になると推計されています。国民の3人に1人が65歳以上、そんな時代がやってこようとしています。

介護人材は毎年5万人以上増員が必要

介護サービスを支える人材も引き続き深刻な状況が続きます。2021年7月、厚生労働省は2年後の2023年度に約233万人の介護職員が必要になると発表。2019年度の職員数(211万人)と比較すると約22万人が不足する計算となり、毎年およそ5.5万人の介護職員を増やす必要があるとしています。

介護の現場から、人材不足への叫び

介護業界で働く人たちが仕事への熱い思いを語るイベント「介護甲子園」を主催する一般社団法人日本介護協会が2021年9月に実施した意識調査では、介護職員や介護事業経営者の86.2%が人材不足を感じていると回答。介護業界が慢性的な人材不足であることを示す結果となりました。また、92.4%が5人以下の採用で人材が充足すると答え、介護サービスの種類により差はあるものの、比較的少人数で人員が確保されることで現場の不足感が解消される可能性があることがうかがえます。

「ミライのための意識調査」
【第1回】介護現場の人材不足に関する意識調査

介護職員の確保に向けては国もさまざまな対策を打ち出しています。外国からの介護人材受け入れもそのひとつ。厚生労働省が2022年1月28日に発表した「外国人雇用状況」の届出状況によると、令和3年10月末現在、介護事業などに従事する外国人労働者は41,189人で前年より約38%増えています。

外国人介護人材の受け入れには、それぞれ目的が異なる「EPA(経済連携協定)」「在留資格(介護)」「技能実習」「特定技能1号」の4つのルートがあります。特定技能では海外に向けて外国人目線で介護の仕事や日本の魅力を積極的に発信するなど(厚生労働省 外国人介護人材受入促進事業 公式サイト「Japan Care Worker Guide」)、新たな戦力として現場からも期待の声が上がります。

初めての外国人採用、文化の違いなど正直不安も

ご自身が経営する介護施設で初めて外国人を受け入れることになった、一般社団法人日本介護協会理事長の平栗潤一さん。雇用に踏み切った理由は、職員の皆さんが高齢化してきていることや、人員を安定的に確保できている今なら新しい取り組みに挑戦でき、外国人の職員にも手厚い研修や指導ができる、といったことだったそうです。
いっぽうで、初めて外国人と一緒に働くにあたり、文化の違いなどで自分たちの当たり前が当たり前ではないのかもしれない、という不安も感じています。

利用者さんの姿を見て不安が安心に

10月から平栗さんの施設で働き始めたインドネシア人の方は、日本語はまだおぼつかないものの、高齢者の方を幸せにできるような素敵な笑顔の持ち主。就業前に何度か職場を訪問していて、施設を利用している方からの反応も上々だったとのこと。「インドネシアから来てくれたんですよ」と紹介すると、利用者の方から「へぇ、がんばっているのんやね。身体大丈夫?」などと声をかけている姿を見て、それまでの不安が安心に変わったそうです。

(写真提供:平栗潤一さん)

偏見を捨てて丁寧に教えることで介護の質も向上

平栗さんは以前、学校の先生をしていた時に外国籍の学生が多いクラスを担当していたことがあり、その時の経験も活かせるのではないかと考えています。

「「ゴミはゴミ箱に捨てようね」と何度言ってもゴミを床に捨ててしまう学生の方も多く、アレ…ということもありました。が、これは文化の違いですのでイライラしても仕方ありません。1回言っても聞かなければ2回言えばいいですし、ある意味、日本に来ていただいた方々ですので、感謝の気持ちで対応しましょうね、と職員には話をしています。」

平栗さんはまた、職員が外国人に丁寧に教えることで現場の介護の質が上がったように感じています。ご自身も、偏見で「外国人は…」と敬遠する人も多いが、そんなことはないな、と実感しているそうです。

日本の介護を学ぶ外国人の若者たちが増えている

技能実習の職種に介護が加わったのは2017年(平成29年)。2020年度(令和2年度)の構成比は4.7%と技能実習生全体ではまだ少数派ですが、日本の介護を学ぶ外国人の若者たちは年々増えています。コミュニケーションが必要な職場で実習をするため日本語の上達も早く、今後も存在感を増していくことが想定されます。

介護の仕事が好きな技能実習生、母国での起業も夢見て

私たちアイム・ジャパンではおよそ200人の技能実習生が全国の介護施設でがんばっています。その半数以上を占めるのがスリランカ出身の女性たちです。取材を通して出会った皆さんは実習や日本語の勉強にも熱心で、笑顔がチャーミングな方ばかり。何より素敵だと思ったのは、介護の仕事に大きなやりがいを感じているということでした。

なかには介護の仕事の素晴らしさや楽しさへの気づきから、将来は母国で介護に関するビジネスを始めたいと夢見る技能実習生さんも。世界に広がる日本の介護。彼女たちが描く未来は私たち日本人にとっても大きな励みになりそうです。

長崎県の小規模多機能ホーム「王樹(えんじゅ)」のシトゥミニさんとアシニさん。
特定技能制度の理解を深めるためのオンラインセミナー
「Japan Care Worker Guide2021 セミナー」に登場しました。
(写真提供:LIFE・DESIGN株式会社)

長引くコロナ禍、技能実習生さんたちの入国再開が心待ちにされています。私たちアイム・ジャパンは彼ら彼女たちの夢の実現を今後も応援していきたいと思います。

全国でがんばるスリランカ人介護技能実習生の活躍はこちらもご覧ください。

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あとがき

介護の担い手として日本に来てくれる外国人の方を大切にすること。それが私たちの未来につながるのだと思います。外国人材を受け入れる介護の現場では不安を抱えながらも熱く温かいまなざしが注がれ、来日して間もない技能実習生さんたちは人と触れ合い感謝される介護の仕事のすばらしさをすでに知っていました。そう、日本語の上手下手は大きな問題ではなかったのです。「介護は笑顔の仕事、外国人材は日本の高齢者を幸せにする大切な存在です。」過去の自分を大いに反省して、今はそんな気持ちでいっぱいです。

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