4月の正月

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4月の正月

入学式、入社式、新学期、人事異動等、4月は新しいことが始まる時期ですね。
ふと机の上にあるカレンダーを見てみると、なんと正月が3つ揃っています。

  • タイ正月(4/13~4/15)
  • シンハラ/タミル正月(4/13,4/14)
  • ベンガル暦新年(4/14)

どうやら新しいことが始まる時期が4月なのは日本だけではないようですね?
ということで、今回は4月にお正月を迎えるタイ、スリランカ、バングラデシュの3カ国のお正月に着目し、当機構の職員Nさん、Iさん、Sさんにご協力いただきました。

まず、各国のお正月を簡単にまとめるとこんな感じになります。

<タイ・スリランカ・バングラデシュの正月>

<タイ>

ソンクラン
<スリランカ>

アルッ
アウルッダー
<バングラデシュ>

ポヘラ
ボイシャク

<4月に正月?>

編集部(以下、編):
今日お忙しいところありがとうございます。
早速ですが、正月の時期が4月なのがとても気になるので教えてください。

<国が決めた占星術師によって決まるスリランカの正月>

Iさん:
スリランカの正月は、タイと同じで毎年だいたい4月13日、14日で、時間も分単位で決まっています。それで大体一週間から一週間半くらいはみんな大体休みです。
編 :
今年は13日ですか?
Iさん:
13日がイブで14日が新年です。食べる時間や火をつける時間なども明確に決められています。陰の時間というのが決まっていて、正月の前日は陰の時間になると、それ以降は火をつける時間まで火が使えません。
編 :
その時間を決めるのは、例えば大統領などの国のトップの人が決めるんですか?
Iさん:
そうではなくて、陰の時間をホロスコープを見て決める人がいるんです。その人は国全体で決めた人です。
編 :
ホロスコープで占星術ができて、一番力が強い人が決めることができるんですね。
Iさん:
はい。

<バングラデシュの正月は休みが少ない>

Sさん:
バングラデシュは4月14日が正月です。
今現地にいないのであまり詳しくはないですが基本的に休みは1日くらいですね。
編 :
休みが少ないですね。
Sさん:
はい、そうですね。

<1年で最も暑い時期に行うタイ正月>

Nさん:
タイの旧正月は毎年基本的には13~15日です。13日が新年で、13日は老人の日で14日は家族の日と政府が決めています。なので、その一週間はお休みで家族と一緒に過ごしますが、会社によってもさらに休みが長くなるなど色々違います。
それで、その辺は大体連休で1週間から10日間くらいはタイ全体で休みとなっています。
編 :
なんでみんなこの時期に正月があるんでしょうね?
Nさん:
タイではその時期は1年で一番暑い時期なので、水かけ祭りをしたり、さっぱりしたものを食べたりして涼しく過ごします。
編 :
水かけ祭りって誰が誰に水をかけるんですか?
Nさん:
元々、仏像に柄杓で水をかけたり、家の中でも一番年上の人が家族の手に柄杓で水をかけたりする、清めの儀式だったんですが、それが子供の遊びになっていき、広まってだんだん大きいイベントになったんです。

<正月料理>

編 :
正月にどんな料理を食べるか教えてください。

<タイの正月料理はさっぱり>

Nさん:
「カオチェー」を食べます。「カオチェー」は、一度炊いたジャスミンライスをジャスミンの花で香り付けした氷水に漬けた食べ物です。
編 :
日本で言うと冷製おじや、冷やし茶漬けのような食べ物かなあ?
Nさん:
そうですね。昔は、冷蔵庫がなく、氷もなかなか手に入らなくて、このような冷たい料理は珍しかったんです。でも、王室では食べられていたので、王室の特別な料理というイメージが強いですね。「カオチェー」の付け合わせには、薬味や唐辛子などがありますね。「カオチェー」のポイントはきれいな盛り付けです。まずは、見た目で楽しみます。
編 :
きれいですね。
Nさん:
私はカオチェーあまり好きではないので「カノンジーン」を食べます。「カノンジーン」は、ターメリックとかの香辛料を使ったカレー風味のスープに浸けて食べる素麺です。最近では「カノンジーン」の方がよく食べられていると思います。

<スリランカの正月料理は体に優しいキリバット>

Iさん:
スリランカでは、キリバットというミルクライスを食べます。
編  :
どうやって作るんですか?
Iさん:
最初はごはんを炊いて、それからココナッツミルクを入れて作ります。
Sさん:
ココナッツミルクごはんの名前が…?
Iさん:
キリバットです。
Sさん:
バングラも一緒ですよ。「バット」はごはんで「キール」はミルクで、ミルクライスのことをベンガル語で「キルバット」と言います。お正月に食べる訳ではないんですが、そういうものがあります。
Iさん:
そうなんですね!それから、「キリバット」は、一番年上の人がみんなにその決められた時間に食べさせてあげます。
編  :
作るのはその人じゃなくても大丈夫ですか?
Iさん:
はい、大丈夫です。でも、だいたい作るのはその家にいる一番上の女の人です。

<バングラデシュの正月料理は「パンタイリシャ」>

Sさん:
イリシャという魚があるんですけど、食べたことありませんか?
編 :
はい、お祝いの時によく出てくる白身の魚ですよね?
Sさん:
はい。それと一緒に炊いたごはんに水を入れて、その魚と一緒に食べます。
Iさん:
魚には何か味がついているんですか?
Sさん:
はい。魚を焼くときにとうがらしとかスパイスをつけてから揚げのようにフライします。
Nさん:
ごはんは?ごはんに水を入れて?
Sさん:
ごはんは、普通のごはんに水を入れるだけで、そこにその魚を入れて一緒に食べます。入れる水の量は人それぞれです。その食べ物を「パンタイリッシャ」と言うんですよ。

<正月にすること>

編:
正月にどんなことをするのか簡単に教えてほしいんですけど。

<タイは日本と同じく初詣>

Nさん:
日本と同じでみんな里帰りしますよ。家族や親せきと集まって、お寺に行ったり、イベントをしたりします。
編 :
その年によって例えば今年は親せきが家に来たから来年は親せきの家に行くとか、そういうのはありますか?
Nさん:
だいたいおじいさんやおばあさんのところに泊まります。
一番年上の親族のところに行きますね。
編 :
そうなんですね。ちなみにタイではお年玉をあげる風習はありますか?
Nさん:
お年玉はあまりないですが、逆に年下の人から年上の人に祝いの言葉をあげたりします。例えば、「あけましておめでとうございます。今年も一年健康でいらっしゃいますように。」という感じで。
それで、最初は、家族でお寺に行ってお坊さんにお清めしてもらって、終わったら年配の人にお清めして幸福を授かる言葉をもらいます。
編 :
お坊さんはお寺でみんなの方を向いて立っている状態ですか?
Nさん:
お坊さんは座ったままで、一人ひとり今年も健康でありますようにとか言います。
編 :
その時はお布施みたいなものはお坊さんに渡しますか?
Nさん:
いえ、本来お坊さんはお金をもらっちゃダメなので。ただ、実際は色々ありますがね。
編 :
ちなみにそのお寺に線香を立てたりはしますか?
Nさん:
はい。
編 :
スリランカもタイみたいに、線香を立てたりしますか?
Iさん:
線香だけではなく、キャンドルやアロマとか。あとミルクライスも自分たちが食べる前に、ブッダ様にお供えして拝んでから食べますね。
編 :
じゃあ、それぞれの家にそういう仏壇のようなものがあるんですね。
Iさん :
はい。
Nさん:
そうですね。それで、ある程度時間がたったら、下げて自分が食べるんですよね。
Iさん :
そうそう。スリランカでは、それをやるのが家族を一番支える人。お父さんです。
編 :
文化がつながっていますね。

<スリランカは始まりの火の儀式>

Iさん:
スリランカは毎年お正月の用意の時間が決まっていて、新しい年が明ける前の日の半日か1日くらいは何もしないです。
編 :
何もしない?13日の夕方から夜あたりから新年まで?
Iさん:
はい。そうです。火をつけるのは14日ですから、前日の陰の時間からは何もしないです。
特に、火をつけない。あとは料理を食べない。その間は、お寺にお参りに行ったりする人もいますが、それ以外は何もしないです。
それから、国全体で新年はじめに火をつける時間が決まっていて、みんな同じ時間に一緒にかまどの火をつけます。かまどに火をつけることで新しい1年に火がつきます。
それで火をつけたら、キリバットや甘いお菓子の準備をします。お菓子はその時には作れないので、前の日の火を使っていい時間までに作っておきます。お正月のその時はキリバットだけその時に作って、新年最初に食べる時間までおいておき、その時間にみんな一緒に食べます。あと、火をつける方角も決まっていて、今年は東です。
編 :
火をつけるのはかまどだと思うんですけど、その時みんなそこに集まるんですか?
Iさん:
そうです。だいたいみんな集まりますね。
記者:
じゃあ、もし来年が西だったらかまどを囲って西をみて火をつけるということですか?
Iさん:
はい。あと、かまどだけじゃなくてリビングの真ん中でも火をつけます。
牛乳をポッドにいれて火をつけて炊きこぼれるところをみんなで見ます。きれいに炊きこぼしができるといい年になると言われているんで祈りながらみんなで見ます。
編 :
今年初めて火をつけるところはかまど?リビング?
Iさん:
同じ時間にお母さんがかまどで火をつけて、リビングでも長女とか誰か他の人がやります。
編 :
火をつける時におまじないというか拝む時の言葉とかはありますか?
Iさん:
特にはないですが、「明けましておめでとうございます」とか言ったりはしますね。
編 :
なるほど。じゃあ、同じ時間にキッチンではお母さんが火をつけて、リビングでは牛乳の炊きこぼしをやるんですね?
Iさん:
はい、そうですね。
そのあとの時間は、家族でごはんを食べてから、親せきの家に行ったり、近所にお菓子を配ったりして、お正月の挨拶周りをしたりします。
編 :
正月に親せきの家に集まるときは、一番歳が上の人のところに集まるんですか?
Iさん :
はい。お母さんのところに集まってお祝いとか全部そこでやります。
あと、その日はみんな新しい服を着ます。毎年その服の色は決められています。
編 :
今年は何色ですか?
Iさん:
調べたら、今年は緑色でした!
編 :
そうなんですね!じゃあ、今年は4月14日になると緑色の服を着て出かけるんですね。

<バングラデシュは1年分の借金を返済する日>

Sさん:
バングラデシュの正月は、実は昔と変わってきているんですよ。
編 :
え、そうなんですか?
Sさん:
はい。私が子供の頃はお正月という感じがあまりなくて、ビジネスする方々が年が変わって、会計を締めて新年からまた新しい計算を始めるためのイベントだったんです。
私が子供のころはバングラデシュの方々は貧しい方が多くて、物を買う時、その時にお金を払うのではなくて、本に誰が何を買ったか記録していたんです。
例えば、10円とか100円の物を買ったらその分を書きます。それから1年後のベンガル歴の正月の前の日と当日にイベントをやります。その時に、計算を締めるからみんなに呼び掛けて1年分のお金を払いに来てもらって、店は食べ物などを用意して、お金を払いに来た人たちに振舞うんです。そのイベントのことを「ハルカタ」と言います。
編 :
じゃあ、昔はその「ハルカタ」が、その正月のイベントだったんですね。
Sさん:
はい。そのイベントが村や市場で開催されていました。私も参加しました。
それで、私の頃から、また時代が変わってビジネスする人が、その日にたくさん売れるように服を売って、新しい年だから新しい服を着ましょうと宣伝して販売するようになって、今は新年に新しい服を着るようになりました。それで、バングラデシュもだんだん経済が好調になってきたので、そのイベントが少しずつ減ってきています。皆さんもう、現金で払っていますね。
編 :
そのイベントの時にお店の人がチェックするわけで、その1年の間お客さんはお金を払っていなくてその時まとめてドーンとお金を払うわけですよね?
Sさん:
払う人もいるけど、一方で店側は1年の会計を締める日でもありましたが、今はもうそれがなくなってきているので、ただ新しい服を着ます。だから、今はもう赤い服を着るのが主流になってきていますよね。
編 :
はい。最近は、お祝いの時にピンク色のサリーを着る人もいるらしいですね。
Sさん:
はい。それからその日はモンゴルショバジャットというみなさんでラリーをするイベントがあって、ダッカ大学の周辺をみんなで歩いてボルトモルトという場所に行って、音楽を流したりして祝います。

<日本で過ごすお正月>

編 :
みなさんは、日本で正月をどうやって過ごしますか?
Nさん:
タイの家族に電話するくらいですかね。たまに大使館のイベントがあったら参加したりもしますけどね。基本は家族で過ごします。
Iさん:
日本でも今までは同じ風にやりました。今までは14日は休みだから、スリランカ時間に合わせて火をつけたり、子供に見せるためにやりました。子供3人いるから、スリランカの文化も教えなければいけないので。
だいたい一週間前からお菓子作ったりして、旦那さんと協力してやりました。
Sさん:
私は日本に来てから一度もやったことないですけど、日本にいる友達にそういうイベントを企画して、一緒にパンタイリシャ食べたりしている人もいますよ。
多分平日はできないから、土曜とか休みの日に参加していると思います。

<最後に、各国の言葉でごあいさつ>

編  :
最後にそれぞれの国で「明けましておめでとう」を教えてください。
Nさん:
タイは「サワッディ ピーマイ」、「サワッディ ワンソンクラン」です。
「サワッディ ピーマイ」が新年おめでとうで、「ワンソンクラン」でソンクランの日、おめでとうです。ワンが~の日です。
編 :
シンハラ語では?
Iさん:
「スバ アルッ アウルッダー ウェワー」です。
「スバ」はとてもいい、幸せで、「アルッ アウルッダー」はお正月、「ウェワー」はなるようにという意味です。
編  :
じゃあ、よいお正月になりますようにという挨拶をするんですね。
Iさん:
はいそうですね。
Sさん:
バングラは「シュボ ノボボルシュ」です。「シュボ」が幸福という意味で、「ノボ」は新しいという意味です。
編 :
本日はありがとうございました。4月のお正月ってなんか新鮮でしたけど、それぞれの国の違いや、共通点もあったりして、とても面白いお話を聞くことができました。
Sさん:
そうですね。 4月14日って、スリランカもタイもバングラデシュも一緒なのはなんでかなあと思って。
一同 :
確かに!
Iさん:
サンスクリットかな?
Nさん:
元々、ブッダ様はイスラームに関係があるんですよね。
一同:
うんうん。
編 :
じゃあ、みんなインドから来ているんですかね?
Nさん:
うん、あとそれに国や地域の文化が入って。
Sさん:
ベンガルの新年について調べたら、税金を集めるために作ったという話も出てきましたね。
Iさん:
バングラはやはり経済の関係が深いんですね。
Sさん:
はい。バングラというより西インドですね。バングラは西インドの影響を強く受けていますからね。
編 :
そうですよね。コルカタの人も話す言語近いですもんね。
Sさん:
はい、同じです。

いかがでしたか?
4月のお正月についてもっと知りたくなったら、日本にいる外国人、特にあなたの周りにいる外国人技能実習生に聞いてみてください。
そして一緒に文化を広げていきましょう。
最後に、各国の言葉で新年のごあいさつ。
「サワッディ ピーマイ」「スバ アルッ アウルッダー ウェワー」「シュボ ノボボルシュ」
来年はコロナが収束して、盛大に4月の正月が祝えますように!皆さまよい1年を!

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