2021年5月12日
地域社会における国際交流の可能性 KIFA中西副会長に伺いました。
アイム・ジャパン広報誌「With IM」創刊号(2021.Vol.1)「Create Tomorrow」では、これからの共生社会について考えるために、地域に根差した国際交流を実践されている団体の中から、草津市国際交流協会(KIFA)の中西副会長に多文化共生社会実現に向けた取組についてお話を伺いました。今回のウェブマガジンでは、「With IM」には掲載できなかった、中西副会長が地元で国際交流をライフワークとされるに至った経緯や多文化共生社会実現に向けて活動を続けられる中で学ばれたことなど、貴重なお話を伺いました。
自分の知らない世界がそこにはある。ホームステイを通じて知った異文化
中西副会長が国際交流に興味をもったきっかけとは、そもそも何でしょうか?
こうしてKIFAで外国人住民の方をサポートするようになったのは、ホストファミリーとして姉妹都市からの交換留学生を受け入れるようになったのがきっかけです。さかのぼること1995~1996年の頃のことです。当時は国際交流といえばまだ姉妹都市間交流が盛んな時代でした。行政の姉妹都市交流を実施する主体として、各行政都市に国際交流協会が設立されるようになり、海外都市との交流が活発だったのです。
琵琶湖を有する土地柄もあって、国際湖沼委員会(International Lake Environment Committee Foundation)(通称ILEC(アイレック))からの研修生が毎年草津を訪れておりました。当初は、委員会保有の研修施設に宿泊していたのですが、せっかく日本に来ているのに、それではもったいないということで、アイレックさんからお願いされて、ホームステイの受入を始めました。
世界各国からの留学生や研修生を受け入れるうちに、自分の知らない世界がたくさんあることに気づきました。そうした異文化に触れる驚き、面白さに魅了されたのがこうした活動を始めるに至ったきっかけです。
ホームステイを通じて外国の方と交流するようになられたのですね
はい。今お話ししたように20年ほど前は、ホームステイの受入など、どちらかと言えば国際交流、国際協力といった形でKIFAは活動を続けておりました。しかし、最近10年ほどは、日本に住む外国人の方が増えてきたこともあり、多文化共生を中心にした活動にシフトしつつあります。
支えあうというよりは、むしろ支えてもらっている、新たな国際交流のありかた
今のように多文化共生の取組を始められたのには、何かきっかけがあったのでしょうか
多文化共生に団体の活動がシフトしていくきっかけとなったのが、立命館大学のベトナム人講師の方から、KIFAに「ベトナム人留学生に日本語を教えていただけないか」という要請があったことです。私共は、草津市の委託事業を行うなど、あくまでも様々なアクターの橋渡しをする団体です。市内には、他にも日本語を教える団体があるので、何度かお断りしていました。
しかし、若手スタッフがぜひやりたいということで、お手伝いすることにしました。当初は、長くは続かないだろうとみていたものの、気づけばもう10年になります。
KIFAさんがお手伝いされている日本語教室にはどのような方がいらっしゃるんですか?
立命館大学の教室内で行われる日本語教室には、留学生以外にも技能実習生や企業で働く研修生さんもいらっしゃっています。他にも日本人と結婚した主婦の方や留学生のご家族も参加するなど、バックグラウンド様々な人が集まって学んでいます。
こうした活動を続けてきて思うのは、国際交流とは、遠い世界とのやり取りではなく、自分の地域の人と支えあって、お互いができること、できないことを補完する営みだということです。私たちが出来ないことを彼らがやってくれる代わりに、私は、日本語や生活のことについてサポートすることができます。立命館大学での日本語教室をきっかけに、私どもの活動も、互いが互いを支えあう、そうした「多文化共生」に根差したものへと変わってきました。
そうしたKIFAさんが独自に行っている取組について教えていただけますでしょうか。
現在では、KIFAと草津市との共催で「やさしい日本語サロン」を開いて、市域の外国人が気軽に日本人と触れ合い、日本語を学べる場を提供しています。また、災害の発生に備えて外国人機能別消防団員を組織しました。日本語が堪能かつ日本文化も熟知している在住外国人の方々が中心となって、外国人に防災啓発活動や防災指導を行っており、災害時には避難指導、通訳などの支援を行います。いずれの活動も外国人メンバーと日本人メンバーが協力しながら活動しています。
他にも、市内の「在滋賀ベトナム青年会」と協力して「ベトナムDAY」や「感じて、ふれて、ベトナム!」といった地域の方々にベトナム文化を紹介するイベントを開催するなどしています。こうした活動を通じて、地域住民とベトナムコミュニティのつながりが年々強くなっていくのを感じ、両者が協同する街づくりに新たな可能性を感じています。
多文化共生について取り組まれる中で、中西副会長ご自身が気づいたこと・学んだことはありますか?
私個人としては、支えあうというよりは、むしろこちらが支えてもらっているという認識です。みなさん私をいつも気にかけてくださりますし、ときには重い荷物を私に代わって運んでくれたりします。
私に親切にしてくださる彼らと接していると、そうした若い外国の皆さんが、災害時に動けないおじいちゃん、おばあちゃんを助けてくれると思うのです。ですから、普段から顔見知りになってお互いについてよく知っておくことが、地域の防災に限らずあらゆる面で大切だと実感しています。
今後の抱負がありましたらお聞かせください。
年々、地域を担う若者が市外に流出していますので、外国人のみなさんが祭りなど地域のイベントによく参加してくれることを嬉しく思っています。彼らは、日本人の若者以上に私たちお年寄りをよく気にかけてくださります。きっと、お年寄りを大切にする文化があるのではないでしょうか。私たちが忘れてしまった気持ちを彼らの中に見るような気がします。
これからの地域の発展を考えるうえで、彼らをいかに社会の一員として受け入れていくかが、今後一層大切になってきます。今後も、引き続き、KIFAでの活動に邁進していきます。
あとがき
「支えるというよりも、むしろ支えてもらっている。」
謙虚にお話なさる中西副会長から、地域における支えあいの精神を垣間見たような気がします。多様な背景を持つ人が増えるなか、外国人住民と互いに助け合っていくことが、今後の地域の発展に大切になってくることでしょう。
今後もアイム・ジャパン広報誌「With IM」やwebマガジンを通じて、地域における共生社会実現に向けた取り組みをお伝えして参りますのでご期待ください。