2021年6月16日
外国(にほん)で暮らす03
日本にあるイスラム~渋谷区・東京ジャーミイ~
まえがき
「外国(にほん)で暮らす」も連載3回目。今回は、東京ジャーミイ・トルコ文化センター(渋谷区)の館内ツアーにお邪魔して、トルコの美しい建築物や美味しいトルコごはんを満喫しました。ツアーでは、イスラム教について知らなかったことも明らかに…!?
文化は違えども、渋谷から世界に広がる連帯の輪
館内入ってすぐ右手のホールに通されると、ブルーの装飾タイルがはめ込まれた聖地メッカの方向を示す壁の窪みがあります。
それはイスラム教徒が礼拝に立つ方角で、東京ジャーミイの中で最も大切なしるしといえます。イスラム教徒にとって、1日5回の礼拝のほか、1年に1か月行う断食も義務です。このホールではラマダン月の毎日、日没と同時にその日の断食明けの食事会(イフタール)が催されます。
広報の下山さんによると、断食をすることによって、忍耐を学び、食べられること、すなわち神の恵みに対する感謝を学び、分かち合い・助け合いを学ぶそうです。断食期間中は、多くのイスラム教徒がモスクを訪れ、ザカート(寄附、施し)をしていきます。現世で善行を積めば、来世天国に行けるとイスラム教徒は信じています。
イスラム教にはこのような助け合いの精神が溢れています。ツアー中、見知らぬ人同士が、アッサラーム・アライクム(あなたの上に平安あれ)と挨拶を交わし、握手をする様子を何度も目にしました。
空高くそびえるモスクは、人々の生活の中心
モスクの屋根に近い外壁には、空を飛ぶ鳥に休んで行きなさいという人工の鳥の巣が4つ設けられています。
生きとし生けるものは全て神の創造物(命)という、イスラム教の教えを反映しているそうです。
そんなモスクは、地域の寄り合い所でもあり困った人が駆け込む避難所のようなものです。モスクを中心に、病院、学校、公衆浴場、市場などの施設が集まり、生活に欠かせない場所として機能してきました。
礼拝はこころのごはん
ツアーも終盤、正午過ぎの礼拝を見学することができました。
厳かな雰囲気の礼拝所では、意外にも小さな子どもが駆け回っています。子どもが親から礼拝を強制されることはないそうで、親の姿を見て自然と礼拝を始めるのだとか。
- 下山さん
- 「礼拝の時間は皆さんの食事の時間とほぼ同じです。食事で身体に栄養を摂らないと人は生きていけません。でも人間は身体だけでできていません。心があります。礼拝は心の栄養(糧)なのです。」
毎日の礼拝は、早朝、正午過ぎ、遅い午後、日没後、就寝前の計5回行われます。礼拝によって心に栄養を行き渡らせることで、心身ともに健やかに生活することができるのです。
実は身近だった、イスラム
写真や絵で分かりやすく描かれたイスラム文明のイラストマップ。
実は、これはイスラム発の科学遺産を紹介したものです。
- 下山さん
- 「みなさん、身の回りの意外に多くのものがイスラムと関係していると知って驚きます。コーヒーは実はアラビア語です。コーヒーを飲む習慣やコーヒー文化はイスラム世界から世界へ広がっていったのです。オランダの印象が強いチューリップですが、これも16世紀頃に当時のオスマン帝国からヨーロッパに伝わったものです。」
他にも、カメラ、医学、数字・方程式、大学、病院などもイスラム世界で誕生したとされています(諸説あり)。私たちの普段身の回りにあるものが、イスラム教と関係していたなんて驚きです。
人生のガイドブック
ツアーが終了した後、「信者にとってイスラム教とは何なのか」、下山さんに伺いました。
- 下山さん
- 「ここを訪れる信者の多くが、イスラム教の聖典クルアーンは人生のガイドブックと言います。落ち込んだ時、クルアーンを読むと元気をもらえます。あるいは、人生に迷った時に判断の拠り所にもなります。何より、ガイドブックとは安らぎ、幸福の道への神の導きなのです。だからこそ、毎日礼拝に立ち、神を忘れないようにするのです。」
あとがき
東京ジャーミイには、トルコやアラブ諸国、パキスタンやインドネシアなどの方々が多くいらっしゃるそうです。今回参加したツアーには、日本人もたくさん訪れていました。
館内には、美味しいハラルフードを堪能できるレストランやお店もあります。
新宿駅から小田急線で約5分の好立地。コロナ禍が落ち着いたらぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。